与党はギリギリ勝てる!　参議院選挙見通し　ver.5.29

前回（5月22日）時点との違いがある場合は、その理由と根拠を含め、結果・理由・根拠の構成でA4用紙2枚以内にまとめてご報告いたします。

結論

与党（自民党・公明党）が参院全体の過半数維持（125議席）に必要な51議席以上を今回の選挙で獲得できるかは依然として微妙な情勢です。しかし、直近の世論調査動向や野党側の戦略状況を踏まえると、与党がギリギリ過半数ラインに届く可能性も浮上しています。前回予測（5月22日時点）では与党劣勢が強調されましたが、その後に起きた農水相の更迭と小泉進次郎氏の投入による支持率の下げ止まりや、野党第一党をめぐる支持率変動（国民民主の失速）などにより、与党に若干の追い風も出てきました。ただし依然として支持率は低迷し無党派層の動向次第では逆風も強く、過半数維持は予断を許さない状況です。

理由

1. 与野党の支持率・勢力分析: 石破茂首相の下で政権支持率は軒並み過去最低水準に低下しています。主要メディア8社の5月調査でも支持率は5社で過去最低を更新し、不支持が50％を超える状況です。NHK世論調査でも支持率は3割前後まで落ち込み（政権発足以来の最低水準）、ANN調査では5月中旬に27.6%まで低下しました。一方で、5月下旬の緊急世論調査（共同通信、5/24-25）では支持率31.7%と中旬から4.3ポイント上昇し、農相更迭・小泉新農相起用による一定の効果もうかがえます。政権の物価対策への不満は根強いものの、小泉進次郎氏起用に「期待する」声が世論の6割超に上ったとの調査もあり、与党支持離れの歯止めに繋がった可能性があります。

とはいえ与党の支持率自体は依然低迷しています。読売新聞・NNNの合同調査（5/16〜18）では自民党支持率が25%（前回比-3ポイント）に落ち込み、公明党も数％台です。一方、野党側は勢力が分散しており、立憲民主党が6%前後、日本維新の会も数％程度と伸び悩みました。むしろ消費税減税を訴えた国民民主党が衆院選後に支持を大きく伸ばし今年4月には支持率二桁（10～12%）と野党第1党に躍進していましたが、5月中旬の朝日新聞調査では8%に急落し立憲民主の7%と拮抗するまで失速しました。これは参院選比例候補を巡るSNS上の批判などが影響したとみられ、玉木代表自身「支持率の落ち込み」に危機感を示しています。また維新も一時期より勢いを欠き、朝日新聞調査の参院選比例投票先では立憲・国民民主が各13%と野党トップを競う一方、維新も同水準まで上がってきています。このように野党支持層が分散している現状は、与党にとって相対的に有利な点です。どの野党も支持率一桁台で横並びであり、一対一の構図になりにくいことで、自民党の議席防衛にプラスに働きます。

2. 地域別の選挙区情勢: 地方の1人区（32選挙区）は与野党の最大の激戦地です。野党は候補一本化で対抗したい意向ですが、主要野党同士で公認が競合する選挙区が32中11も存在し、約3分の1では野党票が分裂する見通しです。例えば国民民主党や共産党が独自候補擁立にこだわるケースが多く、「野党一本化」が実現しないまま与党 vs. 複数野党の構図になる地域が十数箇所あります。このため与党は少なくとも10前後の1人区で漁夫の利を得る可能性があります。残る約21の一本化実現1人区では接戦が予想されますが、2016年以降の参院選でも一本化により野党が約1/3の一人区で勝利した前例があり、今回も物価高への不満票の受け皿として野党統一候補が複数の地方で議席を奪う可能性があります。特に東北や新潟など野党地盤の強い地方や、基地問題を抱える沖縄などでは与党現職が苦戦しうる情勢です。一方で、例えば保守地盤の強い九州などでは依然自民優位との見方もあり、地域差が大きい状況です。

図：参院選2025に向けた全国の情勢イメージ。地域ごとの改選数と与野党構図を示した概略図。

複数区では都市部で与党が議席を落とすリスクが指摘されています。にもある通り、定数3以上の大選挙区では従来自民党が2議席獲得してきた地域でも油断できず、自民と公明が最下位当選を争う可能性すらあります。例えば東京選挙区（改選6＋補欠1の計7議席）では、自民党は2名当選を狙いますが立憲民主や維新、新興勢力（れいわ新選組など）も含め定数7を巡る競争は激化しています。公明党も東京で1議席確保を目指すため、与党同士で票を食い合い最終議席を競り合う展開も想定されます。同様に大阪選挙区（改選4）では日本維新の会が地盤を持ち、自民党は公明党と合わせても従来通り2議席確保がやっととみられます。さらに3人区の地域では、これまで自民党が2議席独占する例もありましたが、今回は難しくなっています。例えば北海道選挙区（改選3）では与野党それぞれ2議席獲得（過半数）を狙って激突する構図であり、残り1議席を巡ってどちらかが1議席に留まる見通しです。このように都市部・大規模選挙区では与党が従来より議席を減らす可能性が高く、地方の1人区でどれだけカバーできるかが過半数維持のカギとなります。比例区についても、直近の各党支持率から試算すると自民・公明で約20議席台半ばを獲得するとみられますが、残り議席との合計で51議席に届くかは接戦となりそうです。

3. 世論の声・トレンド要因: 有権者の間では物価高騰への不安と不満が強く、とりわけ**「米価高騰」への政府対応が選挙の争点としてクローズアップされています。前農水相・江藤拓氏の「『コメは買ったことがない』発言**」は5月下旬にSNS上でも大炎上し、政府・与党への不信を招きました。「庶民感覚からかけ離れている」「失言では済まされない」など批判が相次ぎ、石破首相も当初は江藤氏続投の構えを見せたものの世論の猛反発を受けて急遽更迭に踏み切った経緯があります。共同通信の調査でも「更迭は遅すぎた」が42.2%、「適切な時期だった」が31.8%と、対応の遅れを指摘する声が優勢でした。新任の小泉進次郎農相に対しては「コメ問題の打開に期待する」との声も見られる一方、「『5キロ2000円台の米が出てきた』との小泉氏発言はズレている」としてSNS上で批判や揶揄が広がり、与党への逆風は完全には収まっていません。

さらに、消費税減税を巡る議論も選挙直前のホットトピックです。野党各党が「物価高対策・減税」を掲げる中、石破首相は5月20日の国会答弁で「消費税率の引き下げは適当ではない」と明言し、食料品の消費税ゼロを提案する野党に対し「一度に消費税を下げることだけが対策ではない」と反論しました。さらに「消費税ゼロにするなら実施まで1年はかかる。スーパーの経営者に聞けば『一晩ではできない』と言うはずだ」と発言したことが伝わると、SNSでは**「言い訳だ」「やろうと思えば迅速にできる」といった反発が噴出しました。首相発言に対し小売業関係者からも「価格変更は即座に対応可能」と指摘されており、国民の怒りを買う形となっています。こうした「聞く耳持たぬ政権」への批判世論はTwitter(X)上でも「#自民党にお灸を据える」などハッシュタグ運動として散見され、無党派層の投票行動にも影響を及ぼす可能性があります。一方で、与党内では「選挙直前に減税を匂わせ世論迎合すべき」との声も出始めており、石破政権も世論の動向に神経を尖らせています。実際、政府はコメ価格高騰への緊急対策や米輸入関税引き下げ検討など参院選を意識した軌道修正**に乗り出しており、選挙戦では物価・景気対策でいかに有権者の不満を和らげられるかが与党のカギとなります。SNS上の有権者の声は日々選挙戦略にも反映されつつあり、農水相更迭や石破首相の発言に対する批判がどの程度投票行動に結びつくかが与野党双方のトレンド分析の焦点です。

根拠

• 世論調査（支持率）: 主要8機関の5月世論調査で石破内閣の支持率は5社で過去最低を更新。不支持率はNHK以外のほぼ全調査で50%超。NHKや読売でも支持率が政権発足来の最低水準に低迷。ANN調査（5/10-11）では支持率27.6%と最低値を記録。しかし、農相更迭後の日経調査で支持率が前月比+1ポイント、小泉新農相に「期待する」声が6割超。共同通信の緊急調査（5/24-25）でも支持率31.7%と中旬比+4.3ポイントとやや持ち直し。
• 政党支持率と野党勢力: 読売新聞・NNN合同調査（5/16-18）では自民党25%、立憲民主6%、維新2%、国民民主11%など与党が首位。国民民主は衆院選後支持率を2%→10%以上に伸ばし一時野党第1党となったが、朝日調査（5/17-18）で8%に低下（4月12%→5月8%）し立憲民主の7%と僅差。野党第1党の座も流動的となり、参院選比例投票先では国民民主13%＝立憲民主13%と並ぶ。維新や共産は支持一桁台に留まり、野党支持は分散傾向。
• 選挙区情勢（一人区）: 全国32の改選1人区のうち11選挙区で主要野党候補が競合し、候補一本化が難航。野党間調整がつかず野党票分散となる1人区が3分の1超に上る。これにより与党は複数野党が競り合う選挙区で相対的優位。残る一本化成立の約21選挙区では与野党一騎打ちとなるが、前回までの参院選でも野党統一候補が約1/3の一人区を制しており、今回も接戦必至。
• 選挙区情勢（複数区）: 3人区以上の大規模選挙区では与党に危機感。「自民が2人当選を実現してきた選挙区も安泰ではなく、自民と公明が当落を争う選挙区もありうる」との報道があり、東京都など大票田で与党が複数議席独占できない可能性。実際、北海道（3人区）では与野党が2議席目を争う構図で過半数の2議席をどちらが得るかが焦点。大阪（4人区）でも維新が強く、自民・公明で議席分け合うのが精一杯との見方。都市部では与党候補同士（自民・公明）が最終議席を競る恐れも指摘されています。
• 世論の動向とSNS: 江藤前農相の「米は買ったことがない」発言（5月）に対し「消費者にも農家にも失礼だ」「耳を疑う」と野党や国民から非難轟々。首相は一転更迭したが「決断が遅すぎた」と42.2%が回答（共同通信調査）。後任の小泉新農相発言「5kg2000円台の米が出てきた」もSNS上で「認識不足」と炎上。石破首相の消費税減税慎重発言も物議：5/20国会で「消費税引き下げは適当でない」「0%実施には1年かかる」と答弁し、「一晩で価格対応できる」「なぜ何もしない」と批判が殺到。こうしたSNS上の有権者の声は無視できず、与党もコメ価格引き下げ策や減税論議に追われる展開となっています。野党は一貫して「#消費税減税」をアピールし支持拡大を図っており、SNS発の世論トレンドが選挙結果に与える影響が注目されています。